伝説の洋画家たち 二科100年展の感想(2015年:東京都美術館)

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伝説の洋画家たち 二科100年展

会期:2015年7月18日(金)-9月6日(日)

会場:東京都美術館

今日は前々からポスターを見てちょっと気になっていた「二科100年展」を観てきました。

日曜日に行きましたが、混雑具合はまあまあで、思ったよりすいてるかなーと言う印象。おそらく土日でも、ゆっくり観られるレベルだと思います。

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1913年、日本画壇の殿堂「文部省美術展覧会(文展)」の古い審査基準に不満を抱いた19名の洋画家たちが、銀座に集まって結成された団体「二科会」

彼らによって立ち上げられた公募展が、「二科展(にかてん)」です。

「二科」と言う名前は洋画家・正宗得三郎が発案したそうですが、文展の日本画部門は「旧科」「新科」に分かれていたので、西洋画もそれに倣ったんですかね。

私は西洋画好きですが、正直日本の洋画家のことは殆ど知りませんでした。

あの明るい光の感覚、軽いリズムのような画面構成って西洋の人独特のものだなぁと思っていたので…。(たぶん目のつくりも視界も違う)

でも以前、中澤弘光展で作品を観たとき「これはこれで素適だなぁ」と思いなおしました。

どこか重たい・湿っぽいけれど、ぬるい南国のような暖かな雰囲気は、日本独特のものなのかも知れない。そういう良さもあるんですね。

下はこの展示の新聞記事。結構大きく絵が掲載されてます。

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二科100年展の感想

今回の展示は4部構成で、時代に沿って「草創期」「揺籃期」「発展、そして解散」「再興期」の4つに分かれていました。

草創期

最初の「草創期」は、やはり西洋への憧れが込められた作品が多く、印象派やキュビズムの画家たちの真似のような作品が多かったと思います。

えぇー…?とちょっと不安になってしまいましたが、誰しもやはり、最初は模倣からなのかも知れません。

私だってモネやゴッホに憧れて、模写をいくつもしましたし。

ここでは、初めて日本にセザンヌを紹介した有馬生馬の作品「鬼」が気になりました。下の新聞にある絵です。

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「その野心は買われたけど、作品そのものはあんまり評価されなかった」とキャプションに書いてあり…

角がないこの鬼は、どこか優しい顔つきをしている気がします。親戚のおじさんみたい。

姿は鬼って言うより妖精みたいな…?不思議な絵ですよねー。

揺籃期

「揺籃期」は急にレベルが上がった感じがして、ドキドキしました。

モーリス・ドニに師事した矢部友衛の習作、アンドレ・ロートのまるでイラストのような浜辺の女性二人、中川紀元のマティス風で平面的な人々!

作風にまとまりが出てきたと言うか、誰かの真似ではなく独自の作品を生み育てていきたいという意欲が目に見え、その感覚が日本画で見られる精神と似ている気がして…何だかホっとした気持ちになりました。

あと「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」でおなじみの、東郷青児の作品…

その美術館で観たときは「ずいぶんサッパリした絵だなぁ」と思っていたんですが、こうしてよく観ると東郷青児ってすごいんだな…って思いました。

キュビズム風のサクっとした画面の中に、パズルのように配置される線と面、そこに情緒が乗ってるところがすばらしい。

「超現実の散歩」と言う絵が好きです。

そして古賀春江「素朴な月夜」と言う作品が、ほんと1929年の絵とは思えないほど、ファンシーな感じでびっくりしました。

全然古臭さを感じない…特にこの狛犬なのか赤べこなのかよく分からない動物の表情、あと飛んでるフクロウが可愛いです。

発展、そして解散

「発展、そして解散」期では、戦争があり前衛的な芸術・思想が禁止されるなど、そんな厳しい時代背景の中で生み出された苦肉の作品が並んでいました。

私はレオナール・フジタ(藤田嗣治)の猫の絵が好きなので、この展示で彼の絵を観ることができて嬉しかったです。

「メキシコに於けるマドレーヌ」と言う絵(新聞の左上の絵)なんですが、何故か背景にサボテンが…メキシコだから!?

何かルソーのジャングルの絵みたいな雰囲気があって、異世界にいる気分になります。

再興期

「再興期」はもう完全に現代(近代)芸術になっていて、古さを感じない絵ばかりでした。

何だか急に大きな作品が多くなり、作風も急にモダン。

どうも私にはイマイチ理解できない抽象画ですが…でも、岡本太郎の絵は分かりやすいなぁって思います。

戦争が終わり復興する日本、自然が失われビルの街ができていく…豊かになっていく生活への喜びよりも、失われたものに対する不満や不安を表すような作品たち。

絵って人の心を映し出しますが、時代背景によって、こんなにも全体的な絵の雰囲気が変わってきてしまうんですね。

いかがでしたか?

日本人の描く西洋画ってこんな感じ!という展示で、とても観やすく、親しみやすい展示でした。

ちょっと画像が少ないのが申し訳ないのですが、是非公式サイトなどで作品画像を見てほしいです。できれば美術館に行って実物を観て頂ければなぁ…と、思います。

おまけ

上野の不忍池です。蓮の花が開きかけ。

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