BANANA FISH(バナナフィッシュ)のこと:わたしの好きな漫画

先日「BANANA FISH」(バナナフィッシュ)が2018年にアニメ化されると聞き、少女時代に友人からこの漫画を借りて読んだことを思い出した。

当時の私は文学的な少女漫画よりも熱い少年漫画に傾倒しており、その頃は微グロのバトル物「幽々白書」にドハマりしていた。

しかしこの「BANANA FISH」1巻の頭からいきなりリアルなベトナム戦争、出てくるキャラクターは外国人ばかりで顔も名前も覚えられず、タイトルのバナナフィッシュもオシャレすぎて意味わからねぇよ!

…となり、当時の私には難しく、すぐにドロップアウトした。

しかし大人になってからふと思い出し、今なら読めるのではないかと購入。

最近ようやく読破することができたので、この新鮮な気持ちをぶつけたいと思いこの記事を起こした次第である。

なお、私見と単なる感想が多く含まれるのでご了承願いたい。

「BANANA FISH」は、「別冊少女コミック」で1985年5月号~1994年4月号の間に連載されていた吉田秋生の漫画。ジャンルは少女漫画、当時にしては数少ないBL(ボーイズラブ)要素を含む長編漫画である。

※ネタバレ注意!!

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BANANA FISHの内容

内容はひと言で言うと「若者とマフィアとの抗争に係る愛憎劇」の物語である。

長い話なので登場人物も多いが、以下の3人だけで内容の説明はできそう。

  • 主人公のアッシュは金髪・翠目・IQ210・細身・女顔・殴り合いも銃撃戦も強いスーパーイケメンアメリカ人
    かわいい顔してダウンタウンチンピラのボス。7歳のときに性犯罪に遭い、誘拐されて男娼をやらされる。その後マフィアのボス・ゴルツィネに見出され愛人兼跡取りとして育成されるも反発して脱走、チンピラを統率して敵対する。
    兄が「BANANA FISH」のせいで廃人になりその謎を追う。
    愛に飢えており無償の愛を注いでくれる英二を大切に思うようになる。
  • 準主人公の英二は知り合いの記者の取材にくっついて渡米してきた日本人大学生。
    棒高跳びの選手だったが何某かの理由で挫折した。
    ストリートチルドレンの取材時に抗争に巻き込まれ、アッシュと仲良くなりそのまま親友に。弱いので攫われてアッシュをおびき寄せるエサにされたりする。
    ポジション的にはヒロイン
  • ゴルツィネはマフィアのボス。アッシュは自分の所有物であり、手に入らないなら極限まで苦しめて殺すと豪語するヤンデレおじさん。ホルマリン漬け・剥製にして飾りたいとか言う。
    その反面、アッシュの髪と目の色に合わせた生地を作ってスーツをこさえ、着飾ったアッシュをパーティに連れまわして自慢、ロールスロイスを贈って溺愛する。

具体的な内容としては、人間をマインドコントロールできる麻薬「BANANA FISH」めぐって国家レベルの陰謀・権力争いが起きる。それを白日のもとに晒し、ついでにゴルツィネを失脚させて自由になるのが主人公アッシュの主な目的である。

なお銃撃戦シーンが多くあるが、具体的なバトルや頭脳戦には重きを置いていないと感じる。基本的に逃げたり追いかけたり隠れたりして、銃で殺し合うのみである。

体躯に似合わない怪力やよく分からないIQテストなど、ご都合主義も多く見受けられるため、あまりリアルさを期待して読むものではないと思う。

BANANA FISHの感想

全体的なストーリーはシンプルで、一気読みしてもストレスがない。

その反面、中断して期間を置いてしまうと、どこまで読んだのか忘れてしまうくらい情景描写が平坦である。だがその平坦さが会話に独特のテンポを与え、これが80年代の漫画の手法なのだろうか、まるで古い映画を観ているような錯覚に陥る。不思議な雰囲気の漫画である。

そして「BL(ボーイズラブ)」要素を含む作品であると前述したが、個人的にはあまりBLしていないと思う。

アッシュは英二に向かって「側にいてほしい」と言うが、それは精神面での支えとしてであって、性的・肉体的なつながりは一切ない。

むしろ強制的に男娼をさせられていた彼にとって、男性に性的な目で見られることは苦痛でしかないはずである。だからこそ母のように、家族のように無償の愛を注いでくれる英二を愛したのだと思うし、例えふたりに未来があったとしても永遠にプラトニックな関係のままだろう。

ここでお察しいただけたと思うが、アッシュはラストシーンで死ぬ。しかもその死に様はかなりあっさりした死に方であり、長々とドラマチックなストーリーを紡ぎ、インディー・ジョーンズばりに銃弾をかわしまくった主人公が格下にすんなり殺られる様は「どうしてこうなった?」と思わざるを得ない。

書いていて思い出したが、昔「振り返れば奴がいる」と言うTVドラマがあった。アッシュはその織田裕二役とほぼ同じ死に方である。

バブル期は暗い話・死ぬ話が流行っていた。だから「BANANA FISH」もそういう死にエンドにしたのかも知れない、死して愛は美しく永遠に、みたいな…?

これは景気が良かったときだからこその世相だと思う。(「振り返れば奴がいる」は三谷幸喜脚本でもともとコメディだったらしいが、勝手に流行の鬱ドラマに改変されたらしい)

しかし景気が悪くなるとみな明るい話を求め始めるのか、ゆるふわラブストーリーが流行って今はこの有様…。「BANANA FISH」のアニメも何か不安になってきた。全然人気出なかったら悲しい。

2018年のアニメ化は1クールなので13話。カットしても差し障りのないシーンは多そうなので、おそらく最後まで入れるつもりなのだと思う。ただその編集段階で、この物語が抗争メインになるのか、愛憎劇メインになるのかは興味深いところである。おそらく両方取り入れようとするとどっちつかずの器用貧乏になりそうなボリュームだと思うので…。

10年前と比べてアニメの質は上がってきているし、観客の目も肥えてきている。2018年にこの作品がどのようにリリースされるのか注目したい。

…と、ここまで長々と書いてしまったが、結論として、読んでおいて損はない面白い漫画だと思う。シリアス系の少女漫画好きの方にオススメ。BL展開を期待して読むものではないが、少年買春する変態おっさんが何人も出てくるので興味ある方はどうぞ。

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描き込むタイプの作家ではないため、縮小されまくった文庫版でも十分事足りる。電子書籍版もオススメ。

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